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大動脈弁閉鎖不全症(AR)を見逃さない

黄色いシャツを着た女性
黄色いシャツを着た女性
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定期的に検査をしてARの進行を把握

1. ARの病因はさまざま


  • ARの機序としては、弁自体に器質的変化をきたしている場合と、上行大動脈が拡大しているために弁尖間の接合が浅くなって逆流を生じる場合があります。
  • ARの病因はさまざまですが、加齢変性と二尖弁による逆流が多く見受けられます。二尖弁の場合、基部拡大も伴う事もありますので注意が必要です。
  • 感染性心内膜炎(IE)などの急性ARは迅速な診断と治療が必要です。
  • 慢性ARは病態の進行がゆっくりで症状が出にくいため、進行を把握しておき、適切な手術時期を逃さないことが重要です。

etiology of AR
etiology of AR
etiology of AR
etiology of AR
etiology of AR
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2. ARを見逃さないための外来診療

弁膜症の中でも、慢性ARは、病態の進行がゆっくりで症状が出にくいため見逃されることがあります。症状が出現する時には心機能が低下していることも多いため、早めに発見しフォローしていくことが重要で、外来診療では特に血圧、視診・触診、聴診などが早期発見のカギとなります。
ARが疑われたら心エコー図検査をしてください。

血圧

  • ARでは収縮期血圧が上昇し、拡張期は大動脈から左室へ血液が逆流するために拡張期血圧が低下する結果、脈圧が大きくなります。
  • 上下肢の血圧の差が認められます。下肢血圧が上肢血圧よりも著しく高い(≧60mmHg¹)場合には有意なARが疑われます。

視診・触診

  • ARでは脈圧の増大を反映して頸動脈拍動の振幅が大きくなります。頸部の視診で動脈拍動が目立つ場合にはARを疑ってください。
  • ASを合併しないARは頸動脈拍動の立ち上がりが早くなります。典型例では二峰性を呈します。
  • ASを合併するAR(ASR)では頸動脈拍動の立ち上がりは早くなく典型例では振戦(鶏冠、Shudder)を認めます。

聴診

  • ARの聴診はASと比べて難しいとされています。ここでは、AR、AS、ASRの心雑音の比較をして特徴をつかんでください。
  • 以下画像の再生ボタンをクリックして、胸骨左縁第3肋間(3LSB)の3パターンをお聞きください。

AR心雑音の特徴

胸骨左縁で、随伴性の収縮期雑音とⅡ音に始まる漸減性拡張期雑音を聴取します。

ARにおいて雑音が胸骨右縁で強い場合は上行大動脈拡大も疑われます。


AS心雑音の特徴

収縮期雑音で、心尖部や鎖骨部などでも広く聴取します。


重症化すればⅡ音の減弱が見られます。


ASR心雑音の特徴

往復雑音でⅡ音を境に収縮期雑音と拡張早期雑音を聴取します。


収縮期雑音は心尖部や鎖骨部などでも広く聴取します。

3. 重症度は主にTTEで評価

  • ARの重症度評価には、TTE(経胸壁心エコー図検査)が推奨され、治療介入の時期を決定する際の重要な指標となります。
  • TTEによるレポートの経時的な変化を意識して確認してください。また、逆流の重症度だけでなく心機能が低下していないか、心臓への負担も確認することで、より総合的なARの評価につながります。
  • 感染性心内膜炎(IE)などの急性ARは迅速な診断と治療が必要です。
  • TTEで確定できない場合は、 TEE(経食道心エコー図検査)や心臓MRI検査などを組み合わせ、総合的に判断します。

各種検査によるAR重症度の判定

AR table
AR table
AR table

4. TTEによる定期的なフォローアップが重要


  • 長期間ARが続くことで前負荷・後負荷に対する予備力が破綻し、左室駆出率(LVEF)の低下が始まり、さらに進行すると心筋障害が進行し、左室機能低下が不可逆になります。
  • 無症候性ARの場合、TTEによる定期検査が推奨されており、この検査でARの進行や心機能低下の度合いを把握することが重要です。
  • 感染性心内膜炎(IE)などの急性ARは迅速な診断と治療が必要です。
  • フォローアップを漫然と続けていると、手術のタイミングを逃してしまう可能性があります。タイミングを逃さないためには、さまざまな指標をバランスよく総合的に評価する必要があります。

TTE
TTE
TTE
TTE
TTE
TTE

「2. ARを見逃さないための外来診療」監修・音源提供:室生卓先生(倫生会みどり病院 理事長・病院長/心臓弁膜症センター内科)

参考文献

  1. 吉川純一(著), 心臓病診断学の実際.  東京: 文光堂; 1990. p.118.
  2. 日本循環器学会/日本胸部外科学会/日本血管外科学会/日本心臓血管外科学会合同ガイドライン、2020年改訂版弁膜症治療のガイドライン.
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/04/JCS2020_Izumi_Eishi.pdf(2023年4月閲覧)