Interview
心臓手術経験者インタビュー
連載#2
岩林さん(千葉県在住)
長年マーケティングやブランド戦略の仕事に携わり、定年後にセカンドキャリアを歩み始めた岩林さん。
僧帽弁閉鎖不全症の手術を経て、現在は広告ディレクターや大学講師として充実した日々を送っています。手術の体験談や今後への思いなどを聞きました。
私の セカンドキャリア が動き出す
豊富な職歴を生かして新たな仕事に挑戦中
私は大学卒業後、一貫してマーケティングやブランディングに関わる仕事をしてきました。ただ、職種はずっと同じでも勤め先は何度も変わっていて、広告代理店や通信事業者、地方自治体など多くの業種を経験してきました。我ながらずいぶん転職したものだと思います。
私はもともと退屈が苦手で、常に何かしら新しいことに挑戦していたいという気持ちが強く、定年退職後の今も職歴を生かした仕事を続けています。週のうち2日は広告代理店でプランニングディレクターを続けながら、大学で非常勤講師を務めるなど、これまでと違う仕事にもチャレンジしています。
でも、講師をするのは初めてで、不慣れだからかもしれませんが、結構大変です(笑)。授業の準備に2日、課題の採点などに1日かかるので、結果的に毎日忙しい状態になってしまいました。それでもやはり学生たちと接するのは楽しいですし、日々刺激的な経験ができていることをうれしく思っています。
検診と相談を続け適切なタイミングで手術へ
一方で、私は長い間不整脈と付き合い続けてきました。20代前半で自覚し、健康診断でも指摘されていたのですが、それほど深刻な状態ではなかったので何となくそのままにしてしまっていたのです。
ところが50代前半になったとき、会社の健康診断で心房細動が見つかりました。精密検査をしたところ、不整脈のほかに心臓弁膜症のひとつ、僧帽弁閉鎖不全症もあることがわかったのです。医師から、進行すると心不全になる可能性があるため、いつかは手術が必要になる、手術は開胸手術になると説明を受け、漠然とした不安を抱いたのを覚えています。
ただ、まだ初期の段階だったため、その後は3か月に1度定期検診を受けながら、不整脈の投薬治療を続けました。その5年後、自転車に乗ると少し息苦しさを感じるようになり、医師と相談して心房細動を止めるためのカテーテルアブレーション手術を受けました。
それからさらに数年後、定期検診で心臓弁膜症の進行がわかり、医師にそろそろ手術したほうがいいのではと言われました。おそるおそる「開胸手術ですよね?」と聞いたら、今は医療技術が進んで低侵襲でできる方法があり、私の場合はその方法を採れそうだと。それが決め手になって手術を決断しました。
退院後は不安も消え仕事に打ち込めるように
2022年、私は僧帽弁にリング(人工弁輪)を取り付ける手術を受けました。検査入院もして家族全員で詳しい説明を受け、しっかりと理解・納得した上で手術に臨めたので本当によかったと思っています。
手術自体は2時間程度で終わり、2日後には歩行、4日後には自転車を使ったリハビリが始まりました。そして12日後には退院。本当は14日間の予定だったのですが入院生活が退屈すぎて(笑)、自分から早めに退院したいと申し出たら意外にすんなりと許可が下りたんです。傷口も小さく、術後の経過も順調で、今後の生活への不安はほとんどありませんでした。
手術後は息苦しさがなくなってスッキリし、極めて快適に過ごせています。何よりよかったのは、常に抱えていた「病気への不安」が消えたこと。今は3か月に一度定期検診を受けながら、気がかりなく好きな仕事に打ち込むことができています。
生活習慣の面では塩分のとりすぎに注意を払うようになり、ウォーキングや軽い筋トレなどで体を動かすようにしています。それと、スマートウォッチや体組成計を買って、心拍数や歩数、体重、体脂肪、睡眠スコアなどを計測・管理し始めました。もともとそうしたことが好きなのですが、退院後はさらにハマってしまい、今では妻から「計測マニア」と言われています(笑)。
元気に働ける時間を社会のために使いたい
これからの時間は、できる限り社会に役立つような、有意義なことに使いたいと思っています。人が元気に働ける時間には限りがあります。日本人の健康寿命は75歳前後だと言われていますから、私の場合はあと10年。のんびりしたい気持ちもなくはないですが、今はまだやりがいや社会的意義を追求したいという思いのほうが強いです。
私は仕事と並行して、ブランディング関連の学術組織でも活動してきました。これまでも研究や論文発表を重ねてきましたが、今後はさらに積極的に取り組んでいくつもりです。市民参加型の地域づくりプロジェクトを実施して、自分の理論が社会に役立つかどうか実証できたら──。そんな夢を描いています。
心臓弁膜症の経験者として、私が一番大事だと思うのは定期的な健康チェックです。企業の健康診断はもちろん、場合によっては自ら情報収集したり、検査を補っていくことも必要でしょう。自分の体の感覚は自分が一番わかるはずですから、ちょっとした異変も見逃さないようにして、気になることがあればとにかく早めに専門医に相談してほしいですね。
手術の方法や医療機器は日々進化しています。何もせずに不安を抱え続けるのではなく、ぜひ専門医を受診してみてください。そうすれば少なくとも不安感は減らせますし、病状改善への道も開けるのではないかと思います。
上記の患者さんのインタビューは、エドワーズライフサイエンスが、実際の患者さんのご経験を伺い、書き起こし、編集したものです。記載された症状や治療、治療後の生活などは個々人によって異なり、すべての方にあてはまるものではなく、また特定の治療等を推奨するものでもありません。ご自身やご家族の症状や治療について気になることがございましたら、医師にご相談ください。
心臓手術経験者インタビュー
「動きだす、心のそばに。」
心臓病の治療を経て、ふたたび歩み始めた方々の インタビューを
紹介しています。病気がわかった時の思いや治療の様子、心境の
変化など、心臓手術経験者の生の声をお届けします。